星の彼方 雲の隙間

声が届かなくても想ってるよ

悲しみの大きさを越えてく強さ〜Endless SHOCK2015 15th Anniversary

それは、祈りだった。
紛れもなく、祈りだった。


2015年3月20日。帝国劇場。
開演に先駆けて緞帳の前に出てきたそのカンパニーの座長が口にしたのは、何よりも「スタッフを信じている」ということだった。事故に遭った仲間、それを目撃した観客、夜公演に入る筈だった客への謝罪や心配ももちろんあったが、彼は何度も繰り返し丁寧に、カンパニーへの信頼を語っていた。そして選び抜かれた言葉の最後を締めくくったのは「言葉よりもパフォーマンスで示していく」という強い強い決意だった。


<何があってもショーは続ける、当たり前のことだろ?>
<ほんと、事故にならなくてよかったよね!>
<俺なら続けられないけどな、あんな事故があった劇場で>

あまりにも、あまりにも重なっていた。フィクションである筈の台詞が、痛いほど現実とリンクしてしまっていた。それでも、いや、だからこそ、その日の公演が放つエネルギーはかつて感じたことのない、そしてこの先も2度と感じることはないであろう程の圧倒的な強さだった。体が震え頭が真っ白になるのを止めることはできなかった。絶対に負けないと、全員が持てる全てを使って叫んでいた。<ボロボロになる分だけ輝ける>、それを体現したステージだった。

「正直、言うのが怖い台詞があった」「本当に悔しいけれど、これでまた気付かされたことがたくさんあった」公演後再び観客の前に現れた座長は、何も隠そうとはしなかった。筆舌に尽くしがたいこの日の公演を、私はわすれることができないだろう。

他にも今年は15周年の節目でありながら新しい挑戦がたくさんあった。ここで一度完成させるのではなく前に進み続けたいというメッセージがSHOCKカンパニーらしい。

例えば新加入ののんちゃんにモロにタカ。前年までふぉーゆーが務めてきた役どころ、最初は当然批判もあった。それでも回を重ねるごとに目に見えて成長を遂げる彼らはとても頼もしく、板の上で信頼を勝ち取っていく姿には感動すら覚えた。どんどん表情豊かになっていくのんちゃん、玄人然としたダンスとそのキャラクターで話題をさらったモロ、事故の翌日カテコでコメントを求められ、言葉にならないながらもSHOCKが大好きだと伝えてくれたタカ。来年の出演も決まり、これからが楽しみな3人である。

曲目の変更もあった。オンのギラギラした豪華さを表現していたAMERICAからDancing on Broadwayへの変更には正直なところ戸惑いもあったが、シンプルなセットや衣装でも煌びやかなオンブロードウェイを表現できるのだというメッセージが逆に際立って、ただただカンパニーの強さに震えたのを覚えている。オン楽屋での対立も芝居ではなくMissing heartという曲に乗って演じられることになり、コウイチとライバルの内心までもが歌で表現されるようになったことも大きな変更点である。どちらもまだ賛否両論あるように思うが、来年以降さらに表現が仕上がっていくに違いない。

そしてもうひとつ、今年のSHOCKではヤラとウチの違いがかなり明確に打ち出されていたように感じた。正確に言うと、ウチのキャラが確立されたのではないかと思う。

千秋楽を終えた楽屋。植草オーナーと2人になったウチは「センターは目立つから嫌だ。端っこが好き。」という主旨のアドリブを繰り出す。これは美波里オーナーのときには無かったようだが、この台詞は大きな意味を持っていると思う。

ウチはセンターに立つことを望んでいた訳ではない。コウイチが好きで、カンパニーが好きで、ただただ弟として共にショーを創ることが希望だった。刀をすり替えたのも本当に冗談のつもりで、コウイチを驚かせたいだけだった。もうひとつの論拠として、「好きな奴が振り向いてくれない気持ち、俺には分かるんだよ…」という台詞のとき、ウチは明らかにコウイチを指して話している。どう解釈しても私の頭の中では好きな奴=コウイチとしか捉えられない。

ヤラSHOCKはトップを狙うギラギラしたライバルがコウイチを倒したいという思いを諍いの果てに実現してしまうストーリーであり、恋の三角関係が重奏的に作用する。おそらくはこれがそもそもSHOCKという舞台が表現する物語の完成系であると思う。しかしSHOCK2015のウチはそこに新たな視点をもたらした。ライバルというより、弟としての相手役。怒りよりも悲しみが先に表現されるようなウチの演技は、誰の心にもある弱さや愛情を嫌というほど見せ付ける。ヤラはコウイチと同じステージでもがき苦しむが、ウチは最初から自分とコウイチを相対化してはいない。絶対的な唯一無二のお兄ちゃんなのだ。

個人的にはやはり帝劇ヤラSHOCKが至高だと思っているが、SHOCKという舞台の奥深さにまた気付かされる博多座遠征だった。座長がいつも言っているように、正解などは存在しないのだろう。来年は帝劇のみで地方公演がないと発表されているが、さらなる進化が今から楽しみで仕方ない。


ありがとうSHOCK2015
大好きでした

これからもカンパニーの上に大空が美しく輝いていますように