星の彼方 雲の隙間

声が届かなくても想ってるよ

描かれた花弁より棘のある薔薇を抱いて死んでいきたいんだ〜守備力の低さに定評のある五関担が見たABC座2016

「夢ってのは,時間がかかればかかっただけ,良いもんだよなあ…」

 

私は去年のえび座が大好きでした。時を越えて星を超えても5人であることを運命付けられた5人。それはとても愛おしく幸せな物語でした。

 

 

mona051.hatenadiary.jp

 

 

そして今年。

ある日突然発表されたABC座2016のタイトルは

「株式会社応援屋!!OH&YEAH!!」

 

(またすげーのがきたな…?)

(タイトル決めたのどう考えてもジャニーさんだな…?)

(今年は去年ほど本気出して見に行かなくてもいいかな…)

 

正直これぐらいの印象しかありませんでしたが,私達はそのあと衝撃的な事実に気付くことになります。

 

「音楽・脚本 西寺郷太

 

え???西寺郷太ってあの西寺郷太???

えび座に???嘘でしょ???

 

西寺郷太さんといえばノーナリーブスとしてのご活躍はもちろん,ジャニーズファンとしての顔もあり(タイトルを考えたのはジャニーさんでなく郷太さんだったそう!),最近では大好評を博した舞台「JAM TOWN」で音楽を手がけたことも大きな話題となりました。これは後に判明したことですが,JAM TOWNを見た河合くんと戸塚さんが錦織さんと西寺さんに「こういうのがやりたいんです!」と詰め寄ったというのです。

 

結論から言えば,音楽が最高。最高に最高でした。
上手くまとまるかは分かりませんが,珠玉の名曲たちに沿って感想を綴っていきたいと思います。

 

第一幕

OP ☆プロローグ
マーチングバンド/全員(A.B.C-Z以外)
OH&YEAH!!/A.B.C-Z

客電が落ち舞台に光が集まると,出てくるのは応援団に扮した出演者達。観客は一気に応援屋の世界へと引き込まれます。応援団の応援と共に歓声がこだますると,紗幕の向こうに立っているのはA.B.C‐Z。

 

「溜息と躓きで諦めそうになったその夜に叫ぶよ OH&YEAH」

 

テーマソングがとにかスタイリッシュでカッコいい。こんなえびが見たかった。橋本くんの甘い歌声と戸塚さんのセクシーな歌声で一気に舞台の世界観に吸い込まれました。あと河合くんまた歌上手くなったね…!オープニングでは全部歌われる訳ではありませんが「泡沫のものだけが煌いて見える街で僕はほらここにいる」とか,どことなくA.B.C‐Zに被るような歌詞が仕込まれているのも主演舞台のオープニングナンバーならではでとても印象的。

 

1場 ☆茶沢通り
BGM ビニ傘 to Real Love
腐れ縁・イン・ザ・レイン/修也,ジョー,街の人たち

オープニングを終えると舞台上に橋塚五の3人が残り舞台の説明を始める・・・と思いきや最終的には「見ていただいたほうが早い」と放り投げて本編へ。
学生時代から10年クリスマスも誕生日も休みなくコンビニでバイトを続けるジョーに,幼馴染の修也は「いつまで続ける気なのか」と問い質します。しかし甲子園優先でシフトを組んでもらえるこの店をやめる気はない様子のジョー。修也は自分の暴言がきっかけで炎上を巻き起こし予備校講師をクビになったこと,新しい会社に誘われていることを打ち明けます。

 

「毒舌キャラの優しさ」「お人好しで頑固者」

「なんだかんだピンチは頼り合う 僕らの未来に乾杯」

 

オープニングから本編を繋ぐ大事な役割の橋塚五はとにかくかわいみ。かわいみのかたまり。急に猪木の真似してみたり台詞すっ飛ばしたりいきなり違う意味でドキドキさせてくれます。


そして本編は初っ端からふみとつ。とにかくふみとつ。パラダイスのようにふみとつ。ふみとつが腐れ縁て。ベタベタするでもなく,いがみ合うでもなく,腐れ縁。実際に入所が同時期で現在はシンメでもあるふたりですが,これ以上にピッタリの言葉があるでしょうか。背中合わせが似合うシンメと評されることの多いふみとつは決して大勢の前で馴れ合うことはせず,いつも静かに互いへの信頼を滲ませています。良いところも悪いところもすべて知っていて,だからこそ言えることも言えないこともある。そんな絶妙の関係性が舞台上で堂々と繰り広げられているのです。天才の所業。「雨に唄えば」オマージュの曲も傘を使ったダンスも、初っ端から彼らのミュージカル力を証明する出来でとってもよかったです。傘の柄をぎゅっと握る修也先生がめちゃめちゃに可愛かった…!

 

2場 ☆中野のアジアンバー「チェリー・ムーン」
将棋 BANG! #1/桂馬,くりくり,A.B.C-Z

天才棋士黒丸桂馬が人工知能ロボットCATANAに敗北し引退を決意したというニュースを見て,引きこもりだったくりくりは数年ぶりの外出を決意します。静岡から車を飛ばして向かったのは桂馬いきつけのバー・チェリームーン。CATANAとの再戦を頼み込むも,桂馬は聞く耳を持ちません。

 

「僕は桂馬さんにお願いがあってわざわざ東京までやってきたんです!!!・・・CATANAと,再戦してください」

 

ふみとつの次は塚五。やはり天才か。
そしてついに出てきてしまいました黒丸桂馬。黒ライダースに革パン長髪の天才棋士。出てきた瞬間に参りましたァ!!!(土下座)って感じです。天才棋士って銀縁眼鏡に着物じゃなかったのかよ!?心の準備できてないよ!?そしてとにかくカッコいい桂馬さんがくりくりに見せる笑顔!?殺す気なの????


くりくりに一度だけ負けた小学生の頃の対局がYoutubeにあがっているという流れがめっちゃナウくてよかった(かわちゃきと豊田くん?も可愛かったね!)し,それがマイケルジャクソンみ溢れるビートの利いたサウンドに乗せた塚五ダンスバトルで表現されるなんてなんたる眼福なのでせう。勝負がついた瞬間黄色と青のスポットがふたりを照らすのもなんかすごくキマってたし,項垂れる桂馬さんも可愛かった。残念だったのはステージ奥の上段でコーラスをするはしふみとつを見ている暇がなかったことかな。なんか多分振り付けとかもあったよね?毎回「次こそは・・・」と思うんだけど踊ってる五関くんからどうやって目を離せば良いのか分からなくなってしまったようで。


それと店を出て不倫アベックに話しかけられ「…CATANA強かったっスよ…w」って嘲るように言い放つ桂馬さんの目つきとか声とか,なんというか最高でした(語彙力の欠如)。


3場 ☆下北沢の株式会社応援屋・事務所
人の心はマスマティックス?/いしけん,くりくり,桂馬

修也が予備校時代の同僚に誘われたという新会社にやってきた修也とジョー。専務の裕美子さん,そしてシャチョーと出会います。5年前まで夫婦だったふたりは,若き天才石野田賢に突然新会社の立ち上げを告げられたのだといいます。そして現れたいしけんは修也とジョーにきつくあたりますが,ふたりが入社することを確信している様子。良い機会だからと早々に入社を決めるジョーでしたが,一方の修也は口の悪い年下の部下になることに納得がいかず決断を渋ります。

 

「俺も修也のカッとなる性格,損だなって思うことあるよ」

 

はしちゃんのお芝居がやっぱり好きだなあと思わされるシーンでした。人格を憑依させ役柄になりきって発せられる言葉,立ち居振る舞い。その変貌ぶりはゾクゾクするほどでした。修也を追い込むくだりではちょっとハシに見える日もあって,あの役が今年の彼にとってどれだけ大きかったかも思い知らされましたね。


そしていしけんがデジタルボーイズと共にロボットダンスに挑戦した「人の心はマスマティックス?」は,くりくりのDJで繰り広げられる近未来的な世界観で舞台の空気が一変しました。いしけんのスタイリッシュでサイバーなダンスと対照的に舞台上段で将棋のことを考えながら踊る桂馬の振り付けはどこかガチャガチャして人間的で,デジタルVSアナログという物語の核心に迫っていくプロローグの役割を果たしていたのかもしれません。ここも目が足りなかった。


4場 ☆デジタル・コープスの事務所
We're DIGITAL BOYS/デジタルボーイズ

揃いの黒いTシャツでキメた新進気鋭の天才プログラマーたち。いずれも数字に関連したコードネームをもっています。会社を出て行ったいしけんに怒りを露にする彼らは株式会社応援屋を潰すことを決意。加入したばかりのミリオンだけが,いしけんがいたからこの会社が大きくなったのではと問いかけます。

 

「これは俺達デジタルボーイズの,暇潰しだ」

 

 去年のえび座ではたった6人のJr.が八面六臂の大活躍でステージを盛り上げてくれました。対する今年は10人を超えるJr.が出演するということで、パフォーマンスやストーリーの純度が失われるのではと、幕が上がるまでは正直不安でした。でもそれは全くの杞憂。ひとりひとりが個性を出しつつ与えられた役割を完璧に表現する姿は感動的ですらありました。若さ故の勢いや破壊衝動に溢れたアクロバティックなダンスは決してバックのパフォーマンスではなく、彼らだけで十分に一つのシーンが完成していたのが印象的でした。

 

特にのえるの台詞回し、みゅーとの存在感、宮近の全力、そしてSHOCK出演時から大好きだった亮太のダンスが良かったのですが、もうひとつ特筆すべきは七五三掛くんのお芝居でした。七五三掛くんは去年のえび座の精鋭6人衆のひとりだったわけですが、その発声や台詞回しは決して上手いといえるような出来ではありませんでした。それでも1ヶ月の公演の中でどんどん成長していく様子を微笑ましく見ていたのですが、今年は初日から全く違う。きちんとまっすぐに響く声、知的で生意気な仕草、強弱使い分けて空気感を作り出すお芝居、そのどれもがこの1年の大きな成長を感じさせるものでした。そして何公演か観劇した後、パンフレットを開いて驚きました。去年のえび座を終えた七五三掛くんは、お芝居をもっとできるようになりたいとこの1年欠かさずに発声練習を続けてきたというのです。去年のえび座が彼の転機になったこと、それから1年という長きに渡り練習を欠かさなかったこと、それを経て今年のえび座でここまでの活躍を見せてくれたこと、嬉しくてたまりませんでした。もしこのブログが七五三掛担のお嬢さんに届くことがあれば是非伝えてください、七五三掛くんの努力を確かに感じ取って涙を流したえび担がここにいることを。

 

5場 ☆帰り道
シンドイシンドイシンドバッド/シンドバッズ
Waiting for you/いしけん

下北沢からの帰り道,修也はいしけんに裕美子とシャチョーが何故離婚し何故また一緒に会社をやっているのかと疑問をぶつけます。シャチョーとの出会い,裕美子とシャチョーの間に娘がいたこと,彼女が事故で亡くなったこと,それが原因で離婚したことを淡々と話すいしけん。シャチョーは娘の美穂を今も待ち続けているというのです。

 

「茨の街も槍の海でも 花火の消えた銀河の果てまで祈るから」

 

 先ほどの応援屋でのシーンから一転して少しずつ人間らしさが見えてくるいしけんが印象的なシーンでした。どうしてそんなにもシャチョーが好きなのかは最後までイマイチ理解できませんでしたが、互いに家族を失った大きな悲しみを抱えたふたりを神様が引き合わせたのでしょう。

 

そしてきました大名曲Waiting for you!はしふみとつで「君だけに」を彷彿とさせる指パッチンからのグレンチェックな塚五がスタンドマイクと共にせり上がってくる演出!ロマンティックでトレンディ!えびは元気で幸せな曲も歌えるけど、良亮の濡れた声にはこういうのもピッタリなのでバンバン歌ってほしいと思ってます。希求する、慈しむ、祈るような表現をどんどん磨いて欲しい。

 

ところで今回とつごが熱かったのはみなさん御承知の通りだと思うんですが、スタンドマイクを挟んで向かい合うふたりが決して目を合わせなかったのが最初のとつごポイントでしたね(?)なお五関くんはスタンドマイクをなぞる大きな手があまりにセクシャルだったので少し自重してください。

 

6場 ☆千駄ヶ谷将棋会館前(翌朝)
Change Your Mind/いしけん,ジョー,修也,くりくり,桂馬

応援屋への入社を決めた修也とジョー,そしていしけんは黒丸桂馬という天才棋士に会うため千駄ヶ谷将棋会館を訪れます。将棋会館の周りをうろうろする栗田に「もう将棋のことは忘れて親父さんの店を継いでやれ」と言い放つ桂馬。しかし栗田は「今のままでやめたら中途半端」「貴方には僕の人生を将棋まみれにした責任がある」とCATANAとの再戦を涙ながらに懇願します。応援屋の3人も加勢しますが・・・。

 

「貴方はまだ自分の強さを知らない」

「僕は変わる 貴方を支えることで」

 

1幕のクライマックスはハイパー塚五タイム。ダンスやアクロバットが話題になることの多いふたりですがお芝居もほんとに上手いんですよね。特に塚ちゃん演じる栗田がCATANAとの再戦を懇願するシーンはあのふざけた演出(disってないです)との対比で泣かせにかかる力技で、なかなかあれができる役者はいないと思います。それにしても「貴方には僕の人生を将棋まみれにした責任がある」ってすごい言葉ですよね…ファンがアイドルに言いたくても絶対言えない言葉。愛するのも心酔するのも崇拝するのも全部自分の責任でおたくやらなきゃいけないなとはいつも思っていますが、こうして自分の気持ちをまっすぐに桂馬にぶつける栗田はむしろ清々しくて、だからこそ気持ちが届くってこともあるのかなあと思わされました。

 

そしてラストを飾るのはChange Your Mind。これはもうなんといっても五関晃一さんです。ミュージカル得意じゃん!!!

 

\CATANAに勝って引退しろォ~???/

 

ノリノリじゃん!ねえ桂馬さんノリノリじゃん!!

人を小馬鹿にしたような歌い方も、段々と変わっていく表情も、タンバリンを手にした途端人が変わる姿も(ジュピたん…?)、全員とノリノリでアイコンする笑顔も、終わって拍手を待つ間の取り方も、タンバリン投げ捨ててまた拗ねちゃうところも、どこをとっても最高の黒丸桂馬であり五関晃一さんでありました。

 

自由な、そして不思議な夢のある将棋で栗田やいしけんの人生に影響を与えた桂馬さんは、真摯な、そして不思議な魅力に溢れた生き様で私達ファンの人生を変えた五関さんとシンクロします。そんな彼が4人に囲まれ「貴方は僕らの希望」と歌われている現実。こんなに幸せなことがあるでしょうか。ともあれ桂馬さんが真正面からの応援を受け止められないまま1幕は終了します。

 

第二幕


OP ☆2幕オープニング
One More Kiss/A.B.C-Z

青い光が会場を包むと幕があがり,再びグレンチェックのジャケットを決めた5人が登場します。

 

「今までの恋は忘れて  2人のため今夜星が降るだろう」

 

 まず照明の話をしたい。これねえ1階しか入ってない人は気付かなかったと思うんだけど、2階から見ると幕が上がるときにサイドの天井近くが青い光で満たされるのが本当に綺麗だったんだ。本当に星が降りそうだった。

 

そして初日に聞いたときまっさきに思ったのが「少年隊みたい…!」ってことだったんですが、後々郷太さんが少年隊のために作った曲だったということが分かって鳥肌がたちましたね。そのとき少年隊の曲にはならなかったけど、ずっと大切にあたためてきたというこの曲を歌わせてもらえるA.B.C‐Zが本当に誇らしかった。Never My Loveのときもそうでしたが、時を超えて歌い継がれるべき名曲を託してもらえるA.B.C‐Zは強い。100年先だってきっと続いてく伝説を地で行く5人が愛おしくてたまりません。これまたロマンティックでトレンディでキラキラしてうっとりさせられる名曲。

 

1場 ☆裕美子と修也,いしけん
The Same Birthday/裕美子

応援屋の仕事も軌道に乗ってきた9月。裕美子の話を聞く修也といしけん,シャチョーの話を聞くジョーとくりくり。ふたりの馴れ初めから美穂の話,そして別れにいたるまでを4人は真摯に受け止めます。

 

「僕,こんなに笑ったの外出してから初めてです…応援屋に入社してほんとうによかった」

 

 裕美子の話を聞く修也といしけんの瞳にそれまでの邪気はなくなっていて、真剣に、親身になって話を聞いているのが応援屋での仕事の充実ぶりを表しているようで、とても好きでした。事故の現場に戻れない自分を責める裕美子に優しく言葉をかける修也の表情が良かったなあ。裕美子に復縁は無理なのかと問いかけるいしけんは急に子どもにもどったようで目が離せなくて、橋本良亮力が爆発していましたね。

 

一方のジョーと栗田はマッスルパラダイスでした(?)。公演前のゲネでは一番の見所との呼び声も高かったのにいざ見てみたらあまり本編に関係ないサービスシーンだったのには笑いました。とはいえ栗田が昔いじめられていたことを打ち明けるシーンは胸を締め付けられたし、優しい表情でそれを受け止めるジョーくんの人柄もとても素敵でしたね。シャチョーの面白さで笑顔を取り戻す栗田と、そのことを感謝されてはじめて自分に元気が戻ったことを知るシャチョーのやりとりもとても暖かい気持ちになったのを覚えています。シャチョーと裕美子がメインのシーンではありましたが、かえってそれがA.B.C‐Zの長所である「優しさ」を浮かび上がらせているようでした。

 

2場 ☆応援屋の事務所
サポーターズ #INTERLUDE/いしけん
☆応援屋ダイジェスト
桂馬のジレンマ/桂馬(ダンス)

応援屋のコンセプトを思いついたのはシャチョーに出会った時だと打ち明けるいしけん。まだ存在していない「応援」のあり方があるはずだと皆に語ります。一方の桂馬は成功と挫折の狭間でもがき苦しんだ末,CATANAとの再戦を決意するのでした。

 

「栗田…ありがとな!」

 

サポーターズのフレーズをひとりで歌ういしけんがとても素敵でした。長岡の花火に込められた意味を噛み締めながら、祈りを捧げるように歌われるこの曲は後でみんなで歌うバージョンとは違う良さがあったと思います。いしけんの語るまだ存在していない応援のあり方について詳しくは描かれませんでしたが、この辺はいつかスピンオフで見てみたいエピソードでもありますね。応援屋ダイジェストはとにもかくにもプラネッツと再会できたのが嬉しすぎました(ただあれはタイムスリップしていた頃の映像の筈なので時代感???となりましたがまあそんなことはどうでもいい)。

 

そして応援屋が仕事をこなす中、酒瓶片手に裸足で歩いてくる桂馬さん。どう見ても目が濁っています。酒瓶を投げつけたかと思えばいつしかステージにたったひとりになり、真っ白なライトを浴びながら闇を背負う桂馬さんの異様さに会場の空気がピンと張り詰めます。流れ出すのはショパンの「革命」。力強く流麗なその調べに合わせて舞うその人から目を離すことは叶いませんでした。

 

五関くんが、たったひとりで、日生の光と影を支配しているのです。初日はもう何が起きたのか全く分かりませんでした。苦悩に顔を歪め、懇願の色さえ浮かぶような繊細な舞。桂馬は光と影、成功と挫折、そして生と死の狭間で踊っていました。

 

「生か、死か。どちらが男らしい生き方か。」

 

そんな声が聞こえてくるようでした。去年のジュピターにもそんなシーンがありましたが、私は彼岸と此岸の狭間で踊るあの人にいつもいつも惹かれてしまうのです。自己を超越し見えざる高尚で広大なものに捧げられる祈り。それが見えたとき、この人から離れられないと感じるのです。

 

ともあれ再戦に向かうことを決意した桂馬は、自分を信じて気持ちをぶつけてくれた栗田に最初にその報告をして感謝を伝えます。栗田の気持ちがなければきっと桂馬は再戦に至ることはなかったでしょう。

 

3場 ☆デジタルコープス
人の不幸をクリック,クリック,クリック/多田,高井,デジタルボーイズ

CATANAとの再戦前日,いつものようにチェリームーンで飲んだくれる桂馬のもとにいしけんが訪れます。互いの本音を語り合い距離を縮めるふたり。そこへ修也とジョー,くりくりがやってきて裕美子が失踪したとの一報が。自分達がそばにいると気持ちをぶつける4人に一度は背を向ける桂馬でしたが,必ず全力を尽くすこと,そしてこの試合が終わったら応援屋に合流することを4人に約束します。

 

「本当の頭の良さって何だと思う?誰かに流されることなく,自分の道を自分で決められるってことさ」

 

 酔っ払い桂馬さんが!かわいい!!!!
もう五関担のライフはゼロよ!!!!

急に大きい声だしてみたり世界一かわいく敬礼してみたり加藤ちゃんに天然って言われてみたりもう、ほんと、かわいい。頼むからいい加減にしてほしい。なお初日だけあった伝説のはしごちイチャコラシーンがなくなったのは今年1番残念だった出来事でした…

 

それはそうと,ふたりの話は示唆に富んでいましたね。ある種の才能があるが故に流されてここまできてしまったと話す桂馬,それなら自分も馬鹿だと語るいしけん。互いの目に成功者として映っていたふたりは,才能があるが故の同じ苦悩を抱えていました。天才と持て囃されることよりも,本当の自分でありたいと願っていたのです。

 

「明日のCATANA戦,楽しみにしてます」といういしけんの言葉に背を向ける桂馬の目にはまだ迷いがありました。それでも栗田に全力を誓う桂馬はとても人間らしくて愛おしかった。そして刀を渡すときのいしけんちゃんの台詞が最高でしたね。ああいうお芝居できるんだってまた意外な発見でした。桂馬さんも桂馬さんで「分かった!!!」って何が分かったのか全然分かんないところが最高。

 

4場 ☆桂馬VS『CATANA』
将棋 BANG! #2/桂馬とデジタルボーイズ
Delicious/桂馬とA.B.C-Z

ついに訪れた再戦当日。デジタルコープスと一人で対峙する桂馬。初戦と同じく劣勢に立たされたそのとき,桂馬の目に映ったのは自分と共に闘う応援屋4人の姿でした。この対戦を通じてデジタルボーイズが大切なものに気付くことを願ういしけん,ずっと桂馬を信じて生きてきた栗田。それぞれの想いを受け取った桂馬が本当の自分に気付いたとき,全てを懸けた死闘は結末を迎えます。

 

「俺より先に成功してった仲間もいれば,辞めてった奴もたくさんいる。…お前ら,応援ありがとな!お前らの気持ちは受け取った!」
「俺は……この瞬間の為に生きてきたんだ!」

 

 

五関担は守備力が低いとよく言われます。五関くんの攻撃力が高すぎるから仕方ないと慰めてくれる人もいます。率直に言って,今回ばかりは本当に死ぬと思いました。本当に。

 

確かに,ゲネの時点で殺陣があることは分かっていました。でも,こんな,えび座のクライマックスで,一人でなんて。涙が止まりませんでした。嗚咽を漏らさないように口にタオルを当てるのが精一杯で,体の震えを止めることはできませんでした。

 

五関くんの殺陣は風のようだ,と思います。私がそれまでに見てきた,腰を落として刀の重みを感じさせる殺陣とはアプローチが全く違って,でもそれは決して軽々しい訳じゃない。重力を味方につけた華麗で強い剣を持つ人だと思います。そしてそれと同じかそれ以上に,切先を喉元に突き付けられたあの人は魅力的な表情をするのです。追い詰められた筈の刹那,白いスポットライトに浮かぶその顔に秘められた激情は官能的ですらありました。

 

そして何と言っても窮地に陥った桂馬の許に現れる4人。死なせはしないと力の限り桂馬を守ります。A.B.C-Zと応援屋,リアルとフィクションが交錯し,5人がひとつになるのです。そこで放たれる台詞はあまりにも桂馬と五関くんがシンクロしていて,全てが愛しくて,もう泣くことしかできませんでした。言葉にできないくらいに素晴らしい,素晴らしいシーンでした。


話は少し逸れますが,今年の前半、華々しく個人舞台の主演を飾る4人と対照的に、五関くんには目立った個人仕事がありませんでした。もちろん新曲の振り付けもあったし、コンサートも早々に決まっていたのでその振り付けもありました。はしツアでは振り付けだけでなくステージングや照明に挑戦していたことも後に明らかになりました。それはもちろん、彼にしかできない唯一無二の仕事でした。ラジオやテレビでの露出が絶たれた訳でもありません。

 

でも。

 

我儘かもしれないけど、やっぱり板の上でスポットライトを浴びていてほしかった。ステージで輝くあの人が好きだから、半年以上も会えないのは辛かった。だから,こんな大舞台で堂々と真ん中に立っているあの人が見られたことが心から嬉しかった。任されただけじゃなく,それを完璧以上にやり遂げている姿を見られて幸せだった。世界中に自慢して回りたかった。私達の愛する人は光を浴びる為に,みんなを幸せにする為に生まれてきたんだって。

 

とにもかくにも考えうる最高の形で五関くんが報われたこと,製作陣の皆様には感謝してもしきれません。(そしてダラダラとえび座の感想を書いているうちにとんでもないニュースが飛び込んできましたね。五関くん土壇場での個人舞台おめでとう!!!!!)

 

5場 ☆弥彦山の見える街道(長岡)
The Same Birthday/裕美子
Change Your MindⅡ/いしけん,ジョー,修也,くりくり,桂馬,裕美子,シャチョー
サポーターズ/いしけん,ジョー,修也,くりくり,桂馬

応援屋を飛び出した裕美子はひとり,美穂の亡くなった現場を訪れていました。裕美子を探してそこに辿り着いた4人にCATANA戦を終えて駆けつけた桂馬も合流し,花を手向け手を合わせます。ロードバイクで遅れて現れたシャチョーと裕美子に「美穂の代わりにはなれないけど自分を本当の子どもだと思って欲しい」と願い出るいしけん。時を越えて美穂の想いを受け取ったふたりの復縁を,5人になった応援屋が全力で応援します。

 

「どんなに辛い夜も涙が枯れ果てても1人じゃない 忘れないでね」

 

桂馬の殺陣で散々泣いたあとで、裕美子さんの歌にはいつも癒されていました。包み込むような、でも芯の通った素晴らしい歌声。エンディングに向かっていくしみじみとしたお芝居。

 

…とそこに聞こえてくる白馬の足音。なんだなんだなんだ?私が「フェラーリに乗る白馬の王子コウイチ」という人種が好きなのを知っての狼藉か???ありがとうございます!!!!

 

応援屋に入ってよかったと語る栗田と、それを優しい笑顔で見守る桂馬がとても素敵なシーンでした。そしてシャチョーと裕美子の息子になりたいと願ういしけんちゃんのかわいいこと。ふたりの前でなら年相応の顔になれるんだなあと思うとやっぱりいしけんとシャチョーの縁も運命だったのだと確信せずにはいられません。

 

そして最後のCYMⅡ。「貴方はまだ自分の強さを知らない」と歌われていた桂馬が今度はシャチョーと裕美子にそのフレーズを捧げます。応援による幸せの循環を表現する大事な大事なラストシーンですが、とにかく手袋をはめるのが苦手な桂馬さん。汗なのかおててがおおきいからなのか両方なのかわかりませんが、最後までいろんな意味でドキドキさせてくれる人でした。

 

ということでお芝居パートはおしまい!

\からのZ!!!!!!!!!!/

 

 

SHOW TIME

お芝居パートが終わり紗幕が降りるとそこには「to be continue」の文字。舞台下手の袖からシャチョーと裕美子さんが出てきます。さらに登場してくるデジタルコープスの面々、チェリームーンのふたり、そして美穂の同級生と長高OB。その全員が「応援屋に入社させてほしい」というのです。応援屋を全国展開していきたいというシャチョーの意向もあり結果は全員採用。さらには客席の私達まで採用という雑な豪快なリクルート

 

すると落ち着きのないミリオンたん、急に「今一番応援したい5人組がいるんですよォ!!!!!」と大声で主張しはじめます。じゃあその5人の名前を読んでみようとみんなでA.B.C‐Zコール!(ファンが自発的にやってるコールを公式の場で採用してくれたことが嬉しかったよね。届いてるんだね。)すると紗幕のむこうにはカラフルな照明に浮かび上がる最高にカッコいい5人の姿が…!!!


☆Take a"5"Train

 共演者と観客の満場の歓声の中浮かび上がる5人のシルエットのカッコよさには震えるしかありませんでしたね。フリンジや金のボタンがついた軍服風衣装はジャニーズのステージでも鉄板ですが,A.B.C-Zの為に誂えられた動きやすさ重視の衣装はそれでも重厚感たっぷりで本当に強そうでした。そしてT5Tはとにかく。急にどうしたのってくらい河五。電車ごっこの振り付けで後ろの河合くんにやたらと長いフリンジをバシバシ当てたかと思えば腕を組んで頭をコテンと預けてみたり,五関くんのやりたい放題が酷い。そうだよね劇中あんまり絡みなかったもんね・・・。


☆Shower gate

 お次のShower gateではオリジナルの通り五関くんがセンターで4人を操るあの振付がまた見られてとっても嬉しかったです。他ユニ担さんにも褒められたことがある本当に大好きな振付。ここでは大階段に目一杯整列したJr.も登場します。ユニットごとにカラーの違うお揃いの衣装がとても素敵でしたね。曲や振付はお洒落でスタイリッシュながらも圧巻の迫力。当たり前かもしれないけどバックのJr.によって曲の雰囲気が随分変わるものだなあと思わされました。


☆Fantastic Ride

みんな大好きFR!!!!!!

SoooooooooooFantastic!!!!!!!!!!!!!

 

しゃわげからのmixで最高に気持ちよく繋がれたFRにたちまちダンスフロアと化す日生劇場。今にも踊りだしそうになりました。ここでは本編には無かった客席降りがあり,A列前のお立ち台に5人が並びます。ここでははしごちがふたりで向き合ったり背中合わせになったりしてリズムを取り合うのが最高にかわいくてそればかり見てしまいました。世紀の爆モテ爺孫><

 


☆Moonlight walker

 さらにSo Fantasticに繋がれるのはまさかのMw!セリの上でオリジナルの振付を誇らしげに踊る5人が纏っているのはどこからどう見てもBIG STARのオーラでした。大切なシングルCDデビュー曲でありこれぞジャニーズという珠玉の名曲を、生の舞台で命を燃やして歌い踊る姿はやはり王道。エンターテイメントのあるべき形、ジャニーズが目指してきたものはここにあるのだと感じずにはいられません。これからもずっと大切に歌い継がれてほしいと心から思います。


☆サポーターズ~ABC(少年隊)

キラッキラの笑顔でラストスパートを突き進む5人。最後は本編と同じく全力のサポーターズですが、動く大階段を使った演出や出演者紹介などいよいよフィナーレ感が満載です。客演紹介で帽子をサッと脱ぐ河合くんや出演者全員とハイタッチしに行く戸塚田など見所たっぷりでしたがなんといっても五関くんの「心はひとつさ」ですよ。見ました???「心は」ってグーで胸を四回叩いて「ひとつさ」で1を作ってまた胸を四回叩くの!あーもう無理です好きです降参です。白旗。

 

さらに途中で挟み込まれるのは少年隊のABC。Mwでジャニーズの歴史に想いを馳せていたところに原曲通りの振付でまさかの選曲。夢と夢を繋ぎ過去と未来を繋ぐ5人の真骨頂でした。郷太さんのニクい演出。それにしてもマイクスタンドって夢があるよね…少年隊の振りをキレッキレで踊る5人が本当にキラキラしていて素敵でした。

 

再び\からのZ!!!!!/を全力でキメるといよいよ幕降り。愛しさ溢れる幸せなエンディングでした。舞台のおまけでジャニーズに戻ってシングルメドレーなどを歌うショータイムはあまり好きな方ではないのですが、今回のショータイムはまったく違いました。「応援する」「応援される」「勇気を与える」「幸せの循環」といった本編でのテーマが全力のステージと観客の関係性で体現されるメタ構造こそがこの舞台を完成させていたのです。パフォーマンスのクオリティが高いのはもちろんのこと、清々しく前向きで心に染みる出色のショータイムでした。

 

さて、13000字を超えたのでそろそろまとめに入ろうと思うのですが…何から書いたらいいんだろう。

 

「不思議な力」

「アナログの強さ」

「Deliciousな愛」

「流れた血を感じたら」

 

ABC座2016は生命賛歌でした。これまでと違うスタイリッシュでサイバーな舞台から浮かび上がったのは、これまでも描き続けてきた愛や絆の強さだったのです。人が人を想う気持ち、実直さやひたむきさ、血の通った体で生きていくこと…幸せの循環に何が必要なのかをこの舞台は教えてくれました。そしてそれが今まさに私たちとA.B.C-Zの間で起きていることも。

 

最近発売されたSLTコンサートのドキュメンタリーでも、メンバーが口々に「お客さんに助けられた」「ほんとは俺たちが引っ張ってかなきゃいけないのに」「感謝の気持ちってどうやったら伝わるんだろう」と言っているのがとても印象的でした。おたくは好きで応援しているだけだしハッキリ言って彼らに何も返せてはいないのに、5人はいつもこんな言葉をくれるのです。私たちの身勝手な愛を受け止め、それを支えに上を目指してくれるのです。愛と優しさの無限ループ。いつかこの輪が日本中を、世界中を巻き込んで大きな幸せの循環を生むことを願ってやみません。

 

 

幸せを循環させる原動力になったいしけんが好きでした。

 

いつもまっすぐ人を想うジョーが好きでした。

 

ぶっきらぼうな言葉の奥に優しい眼差しを持っている修也が好きでした。

 

憧れを追い続け、諦めずに前を向いて歩き出した栗田が好きでした。

 

本当の自分に向き合い、強くしなやかに進んで行く桂馬さんが好きでした。

 

ひとつになって新たな道を突き進む5人が、大好きでした。

 

 

そして最後にひとつだけ。

 

去年私達の前に現れたプラネッツは、時を越え星を超えても共に歩むことを運命付けられた5人でした。しかし今年の5人はそれぞれの人生の中でひとつになることを選び取った。それが大きな違いだと思っていました。

 

そんな中ある日の連載で塚ちゃんがくれた「何度目かの出会い」という補助線。これには膝を打つ思いでした。そう、彼らはきっとこうして様々な形をとりながら5人でいることを選び続けているのです。それはまさしくABC座で毎年「5人でいる意味」を問い続けるA.B.C-Zの姿そのもの。最初から決められた5人でなかったからこそ、最初から全てを受け入れられた訳じゃなかったからこそ、選び取った今はひときわ尊く愛おしいのだと思います。

 

ずっとずっと、この奇跡が続いていきますように。

5人が5人を選び続けてくれますように。