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星の彼方 雲の隙間

声が届かなくても想ってるよ

来る日も来る日も拍手の雨だ〜シェイクスピア物語大千秋楽を終えて

五関晃一 舞台 上川隆也

私が家族とドライブをしながら呑気に壁打ちをしていたある休日のこと。

 

「五月ちゃん、TL見た?」

 

とお友達からのDM。何事かと慌ててTLを辿ったものの、しばらくは事態が飲み込めませんでした。

 

 

 

五関くんが、

外部舞台に、

出る。

 

 

 

「五関座」とも呼ばれたABC座2016で、私は正直満足していました。えび座でこれだけの役をやらせてもらえた記憶を糧に、しばらくは生き抜けると思っていました。でもその知らせは突然にやってきた。溢れる涙を家族に悟られないよう必死でした。

 

蓋を開けてみればそこに並ぶのは錚々たる共演者の名前。本人の気合の入り方も言葉の端々から伝わってきて、幕が開くその日が楽しみで仕方ありませんでした。脚本家の名前にほんの少し眩暈を覚えましたが、まずは信じることが先だと自分に言い聞かせました。

 

そして迎えた初日。最初の率直な感想は「ホッとした」でした。確かに暗転が長過ぎるとか大道具の搬入が丸見えとかツッコミどころはたくさんあったのですが、何よりもまずストーリーが破綻していない。舞台ならではの生の時間を大切にしている。あの夏の呪いに未だ囚われる私にはそれだけで充分でした。

 

そして遂に姿を見せたネッド・アレンは、自信家で友情に厚く、スマートに遊びながらも舞台に命を懸ける立派な座長。途轍もなく魅力的なスター俳優でした。中の人と変わらないじゃんって意見もあったそうですが、ネッドを地で行くって相当チートじゃない???

 

優雅に踊る姿も一気に場を支配するその声も繊細な瞳の芝居も激しく叙情的な手も、舞台の成功の為に正しくまっすぐに使われていました。あの番手で求められることを期待通りかそれ以上にやり遂げた彼を、私は誇りに思います。彼がカンパニーに愛されていたのもきっとその尽力があったから。本当にお疲れ様でした。

 

そしてここからは共演者の皆様の話を。

 

まずはエドワード役の黒川ティムくん。難しい役どころを立派にやり遂げる姿とカテコで見せるキュートさにやられました。ティムくんファンの方と五関担の間でちょいちょいTwitter上の交流も見られたりして、座組の雰囲気が客席にまで伝播したような素敵な出会いでした。

 

エリザベス女王、そしてダンカン・ランズウィックを演じた十朱幸代さん。小柄でありながら圧倒的な存在感で、女王やダンカンが口を開くと空気がピリッと引き締まったのを感じました。特に大千秋楽のヴァイオラの正体がバレた後のダンカンの芝居が本当にグッときた。カテコ挨拶で女王としての言葉をくださるのもとても素敵でした。

 

ビアトリス、マーガレットを演じた小川菜摘さん。美と教養を備えつつ現実的な感覚を持つ肝っ玉女主人ビアトリスがとても好きでした。一方のマーガレットは物語上悪役の要素もありながら常にヴァイオラへの愛が滲むようなお芝居で、早替えも含めて感服しっぱなし。「これが真実。あたしはお前さんを行かせないよ!」って大見栄きるところは毎回鳥肌が立ちました。カテコでは隣の五関くんをたくさん構ってくれてありがとうございました。

 

ヴァイオラを演じた観月ありささん。御顔の美しさ、スタイルの良さ、空間全てを満たす「陽」の気、伝説の美少女は伊達じゃないと思い知らされました。舞台にいるだけでパッと周りに花が咲くのが見えたし、特にウェディングドレス姿はあまりに美しくて眩暈がするようでした。あどけない少女かと思えば好奇心を抑えられず飛び出していく底知れぬパワーを見せたり、御家の為に義務を果たす責任感がありながら真実の愛を希求することをやめなかったヴァイオラ。それを観月さんが演じると、役に途方も無い説得力が生まれるのです。カテコでのお茶目な姿や、客席全体に可愛らしく手を振ってくれる姿も忘れられません。強く美しいヴァイオラを生きてくれてありがとうございました。

 

そして最後にシェイクスピア上川隆也さん。板の上で生きるウィルは真実の愛に生きた人でした。恋に仕事に思い悩むウィルは私達のイメージしてきた「シェイクスピア」とは違いいつも人間らしくて、暖かく真摯な、そして大きな男でした。相手がどんな芝居をしてきてもきっちり合わせてくるところ、もがき苦しむ心情を表す細やかな演技、優しく甘く力強い声、劇中劇の大熱演、日に日に増えていくアドリブ、どれをとっても本当に魅力的でした。そして何よりも座長として大ベテランから初舞台の役者までを統率しあんなにも暖かい座組をまとめあげてくださったこと、一出演者のファンとしてどんなに感謝しても足りません。初の単独外部舞台で思い悩むこともあった五関くんを優しく受け止めてくださり、板の上でもこちらが恐縮するほど持ち上げてくださり、本当にこの仕事は私達ファンにとっても夢のような時間でした。何度でも何度でも、心からの感謝を。

 

他にも五関くんと公私ともに仲良くしてくださった我善導さん、私に萌えという感情を教えてくれた藤本隆宏さん、文字通り命懸けで舞台に取り組んでくださった秋野太作さんなどなど、26人全てのキャストにありがとうの気持ちでいっぱいです。

 

大千秋楽のカーテンコール特別挨拶、座長の上川さんがこんなことを仰っていました。

 

「舞台は生き物です。僕達がここをハケて幕が降りて皆様が客席を出たら、シェイクスピア物語はこの世から消えてなくなります。でもどうか、皆様の頭の中に、この物語を置いていてくだされば幸いです」

 

舞台が生き物であるということはSHOCKで嫌という程学んできたつもりだったけれど、生き物には死があるということに初めて気付かされました。再演が約束されている舞台なんてない。生を受けたものは必ず死にゆくのです。だからこそその刹那は眩いほどに輝くのです。五関くんが出会ったこの物語は、ずっとずっと忘れずにいたい、そう思える舞台でした。

 

だから寂しいけど敢えて言います。

百回でも、千回でも、さようなら。

また会う日まで。